震災を通して歯科医師の真価が問われているのではないだろうか

多くの人が この状況で何ができるだろう 何かせねば、、、、 考えた、考えたことだろう。 震災のマイナスからフラット(医療の大半が治癒と見なす領域)からさらに、プラスを目指して。私はQOLを支える歯科医療のコンセプトが震災後の日本に大きな力を持っていると思う。色々なものが満たされていた時代の中で、あの時を経験した私たちは、ここから、歯科医療に従事する人間として大きく変わることができる、社会に、患者さんに、若人に示すことができる。歯科医として、医療の中の口腔を担当する者として、支援、義援だけではない。毎日当たり前にやってきた臨床、そして一人一人の患者さんに対しても、本来の歯科医療とはどうあるべきか、社会に貢献していくこととは何であるか、今何をすべきか、本当に大切なことは何なのか、原点に還って考え、そして行動する時なのだと思う。
 今こそ真価が問われている。
歯科医は確かに命を救うことに携わることは少ない。が、心を救うことをずっとしてきたのではなかったか。口腔がんの治療を経て、顔面の癌摘出後の患者さんの人生に幾度となく触れて、生命とは生活だと知った。 生活があるからこそ、人は生きている。晴れた空や、満開の桜や、旬の食べ物を、共に喜ぶ人たちとの関わり、案じ合う思いやり。歯科医だからこそ、食の面から、人々の生活を支えることができる。悲しみの中で、桜の開花や子供たちの笑顔が、一瞬心を和らげてくれるように、一口の味わいが全身に力を沸き起こしてくれることを、私は支えて行きたい。そんな歯科医でありたいと今、考えている。 
 私ごとながら、改めて健康に日々生きていること、そして歯医者になって良かった。この仕事を続けてきて良かった。そして両親に、ご指導頂いた先生に感謝している。
 最終日に震災直後の津波を携帯のテレビで視た名取川に立ち寄る。震災前の風景を知らない私には、この風景が名取川。故郷を再建してゆくここに住む方々に、これから自分にできることは何だろう、し続けていかなければならないことは何だろう。生涯にわたってできる支援を行い、この東北が力強く復興していく姿を見届けていこうと思っている。